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麦工房ブログ

誰もが、健康にやさしい安全な家に住みたいと考えています。

特に、家にいる時間の長い主婦やお子様にとって、住宅は安全な環境でなければなりません。


建築基準法により、現在、ホルムアルデヒドを発散する建材の使用制限や、
建物に24時間の機械換気設備を設けることが義務付けられています。

しかし、法律が施行された当時の意識がだいぶ薄れてきた印象があります。

先日、視察に行った新築の有料老人ホームと小児科診療所は、ひどい状況で
目がちかちかして、呼吸も少し辛いものがありました。
有料老人ホームにあっては、施設のスタッフも目を真っ赤にしていました。

人が居住する建物には絶対あってはならない事態です。

このよう状況から、シックハウス症候群や化学物質過敏症に苦しむ人がいまだ後を絶たないのです。

建物は、設計段階から消費者が責任を持って参加できる唯一の商品という性格を持っています。
そのため、建て主自身が建物に使用される材料に注意を払うことができるのです。

私達が安全な材料選びを始めた経緯

以前、新築のアパートを借りた時の話ですが、住み始めてしばらくすると、のどの刺激、
気道の閉塞感、粘膜の乾燥感などの症状が出ました。

ついには吐き気や頭痛にいたるほど深刻な状況になりました。

アパートの寝室では熟睡できず、通勤の電車が睡眠の場になっていました。

さらに、倦怠感、集中力や記憶力の低下など、化学物質による健康被害のすさまじさを
実感しました。

原因は、床のビニールシートに使われていた接着剤の揮発性有機物質(VOC)でした。
それ以後、ごく微量のVOCでも反応するようになり、別の化学物質の影響も受けやすくなりました。

視察に行った新築の病院で、眼がチカチカしたり、なぜかイライラしたり、
塗りたての塗装のそばに行くと吐き気がしたり、壁紙のサンプルを触っているだけで
指が腫れてきたり、自分の身体に起こる症状は、健康に害を及ぼす材料のセンサーのように
なっています。

この一連の経験を踏まえ、快適に過ごすことを目的に建てられた建物が
健康被害の場であってはならないという思いから、安全な材料選びをしてきました。

シックハウスにならない材料選びここに紹介するのは、
私たちの体験を通して選んだものです。

シロアリ予防:ホウ酸

img182%5B1%5D.jpgシロアリ駆除にはクロルホリピスという有機リン系殺虫剤が
広く使われていました。
建築基準法の改正によりその使用が禁止され、
その代替品が使われ始めています。
しかし、有機リンを使用しない薬剤でも殺虫剤
としての危険性があり、天然成分の駆除剤
(木酢液やヒバ油など)はその耐用年数(数年)
に問題が有ります。

私達は、シロアリが分類学的にはアリではなくゴキブリに近いため、ゴキブリ駆除に
ホウ酸団子が使われていることに着眼し、ホウ酸の水溶液を使い始めました。

VOCの発生がなく、北欧やカナダでは、防蟻剤として数十年前から使用されています。
弱い殺菌力(特に糸状菌に)もあるため木材腐敗菌から木材を保護することもできます。

水で流れてしまうため、雨がかかるところには使用できませんが、
外装材で隠れてしまう構造部では半永久的に 効力を持つため最適の材料だと思います。

日本薬局方によりますと、健康皮膚からはほとんど吸収されないことが記載されています。

ただし、火傷部位や湿疹など開放性創傷がある場合には吸収され易いため注意を要します。

商品としても販売されていますが、街なかの薬局でもホウ酸は容易に購入できます。

今まで現場で嫌がられていた防蟻剤塗りでしたが、作業員の健康被害がないため喜ばれています。

そして、簡単な作業ですので、私達もお施主様と一緒に基礎周辺の木部のホウ酸塗りを
よくやっています。



床の表面保護剤

蜜蝋ワックス

img183%5B1%5D.jpg建物内の床は、化学物質が使用されていない
無垢の木製フローリングをよく使いますが、
質感や転倒時の安全性からも良いと思います。

問題は、その表面保護材です。
私達は、お施主様が自分でもメンテナンスできる
ような安全な材料として、蜜蝋ワックスとオスモ
フロアークリアーを使っています。

蜜蝋ワックスは、ミツバチの巣からできる蜜ロウとエゴマ油から作られたワックスです。
群馬大学付属小学校から安全なワックスを探しと欲しいとの依頼があり、
安全性に問題のない数種のワックスの中から採用したものです。

ワックスがけは、児童、PTA、先生達が定期的に行っていましたので、安全で、
簡単にでき、メンテナンスが容易で、しかも単価が安いことが判断の基準でした。

施工後しばらくして、先生から聞いた話では従来のワックスよりも落ち着いた感じで、
臭いもなく、すべることもないと良い評価を得ています。

オスモフロアークリアー

img184%5B1%5D.jpgオスモフロアークリアーは、安全で、施工が楽で、
メンテナンスフリーといった基準で採用しています。

この材料はワックスではなく塗料です。
ドイツの製品で自然植物油を主原料にしています。

厚生省の食品衛生試験に適合、ドイツの玩具安全基準にも適合しており、その安全性から、
私達もお施主様と一緒に施工することが多い材料です。


内壁の仕上げ

無垢の木製サイディングや珪藻土など自然素材

木製サイディングは表面処理をしていないものを選びます。

塗装を施す場合は蜜蝋ワックスを採用しています。

床のように磨耗の心配が無いためメ ンテナンスも必要なく安全です。

珪藻土は多くの製品が出されていますが、VOCを発生しない材料か確認する
必要があります。
調湿効果もあり、左官材としての質感も良いため採用しています。


ボード下地の壁の塗装

合成樹脂エマルジョン塗料

内壁や天井は、予算面からボード下地の上にビニールクロス張りや塗装を行うことが
多いのですが、ビニールクロスの場合、サンプルを触っているだけで指に炎症を起こす
私達の経験から、選択に注意しています。

そのため、化学製品ではありますが、低VOCの水性塗料(合成樹脂エマルジョンペイント)
による塗装を薦めています。

この材料は塗料中のVOCが0.2%以下と非常に少なく、ホルムアルデヒド、キシレン、
トルエンなど有害なVOCが配合されていません。

塗装後2週間程度で僅かに含まれていたVOCの放散もなくなりますので、入居後の
健康被害もないと思います。

この材料もお施主様と共に施工するときによく使う材料です。


外壁の木材への塗装

オスモワンコートオンリー

室内フローリングの表面保護材でオスモの製品を紹介しましたが、外壁に木製の
サイディングを使用する場合にも塗装はオスモの製品が良いと思います。

たとえ外部であっても安全な材料を使うことをお薦めします。

この材料は、木材の表面に被膜を作りませんのでワレ、メクレ、ハガレがなくメンテナンスも
容易です。

私達が設計した住宅では、外壁の木製サイディングが現場に納品された時点に、
地上で塗装をしたことがありますが、家族や親戚が集まって行った塗装作業がイベント
のようでした。


その他の材料を使用する場合の注意

●接着剤は極力使用しないのがよいと思いますが、壁紙などを貼る場合は澱粉のりを使います。
●建材や製品には、ホルムアルデヒドの発散に応じてJIS・JASで「F☆☆☆☆」の表示があるもの。


カビ・ダニ対策

アトピーやぜんそくなどのアレルゲンの90%以上を占めるのがダニと言われています。

また、カビもアレルギーを起こす原因になっています。

ダニやカビは高温多湿の環境で発生しやすくなります。

ダニであれば温度が27~30度、相対湿度76%前後の高温多湿の環境を好み、
最も繁殖します。
カビについては水廻りや結露箇所に主に発生します。

カビやダニの発生を抑えるためには、結露させない家にすることが大切で、
家全体を均一な温度にすることが必要です。

温度差が生じると水蒸気が温度の低いところに集まり、結露が発生します。
暖かな室内から寒い室内や押入れ、タンスの後ろ、さらには壁や床下、屋根裏などに
水蒸気が侵入し、拡散されないと結露が発生します。

結露対策としては次のような方法が考えられます。

●断熱効果を最大限にするため、断熱材は隙間なく建物全体を覆うようにする。
●基礎、床、天井、屋根、壁に断熱を施す。
 外部建 具(サッシュ、ドア)を木製など結露が生じない断熱性能の高いものを選ぶ。
●断熱の外側つまり屋外側に通気層を確保する。
●全館暖房・換気計画(通風を含む)を前提条件に考える。
●建物内に水蒸気を発生するような暖房器具を極力建物内にもちこまない。

私達が設計する建物は、OMソーラや深夜電力利用床下蓄熱を採用することが
多いのですが、結露が多く発生する冬期には、室内が乾燥するためカビやダニの発生を
おさることができます。