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麦工房ブログ

お客様より カテゴリー

今年1月に完成したY邸の奥様からコメントをいただきました。
ご了解をいただきましたので紹介いたします。


以前から観葉植物が好きで、窓から差し込む柔らかな日光を浴びて、
活き活きと葉を広げる植物に囲まれて暮らしたいと思っておりました。

ボストンを旅した時に訪れたイザベラガードナー美術館は
4階まで吹き抜けた中庭があり、中庭を囲んで部屋がつくられていて、
どの部屋からもバルコニーや窓から庭の緑を眺められます。

そびえたつ2本の椰子と四季折々の花々の彩りが
それは素晴らしく感動的でした。

初めてデザインスタジオ麦工房を訪ねたとき、
30畳ほどもある大きなリビングと、そこへ続くサンルームを眼にして、
長い間心の中で温めていた想いが形となってつながったように感じ、
迷わず設計を依頼しました。

 
出来あがった我が家の外壁は、夫も私も大好きな茶色と黒のストライプに
なっています。

時の流れと共に愉しめる錆びたドアを開けると、中庭を連想させる
レンガ敷きサンルームになっています。

2階まで吹き抜けていて、格子とガラスの天井は月夜になると
幻想的な空間を演出しています。

20畳程の吹き抜けたリビング・ダイニングの南側には
大開口の折り戸が設けられ、バーベキューコーナーとつながっていて、
夫の希望であった屋外での炭焼料理が存分に愉しめます。

動く盛りの幼い子供もおりますが、窓の位置や高さ、
階段等も配慮がされていて、安全に走り回れるようになっています。
 

2×4、2×6工法による開放的な大空間は、家族がそれぞれ伸びやかに、
そして豊かに暮らせる大変気持ちのよい住まいとなっています。

明るく開放的な昼の顔と幻想的でさえある夜の顔を持つこの家は、
飽きることなく家族と共に歴史を刻んでゆくことでしょう。



開院してしばらくたち、少し落ち着いてきた今、
去年一年間ずっとお世話になったことを思い出します。


開院を決意して

思い返してみると数年前から、故郷である群馬に帰り、開院したいと漠然と考えていました。
場所をどこにするか、予算はどうすれば、どんなクリニックが作りたいのか、
等々考えると一歩も前に進めずの状態でした。

しかし、40歳を目前に控え、ついに腹をくくり、場所探し、予算交渉を進め、
あとは建物をどうするかという最大の問題が残りました。


以前より従来の医院とは違うもの、
癒しのあるもの(最近ではこのような風潮が多いようですが)がつくりたいと、
妻と一緒にいろいろな建築雑誌を見たり、
都内の住宅展示場や、コンランショップなどに行きましたが、
どこそこのこれがいい、こんな風にしたいということがあっても、
じゃあ具体的にはどうすればよいのか?誰に相談すればいいのか?
ハウスメーカー?個人の建築家?難しい問題でした。


麦工房との出会い

いくつかのメーカーの話も聞きましたが、どうもしっくりいきません。
個人の建築家の方の話しも聞こうと考えましたが、
どのように選べばいいのか、もしかすると個人の建築家って高いのではないか、
自分と合わなければ困るな…などの不安がありました。

私自身は常に施主の味方になってくれる長岡夫妻に頼んでよかったし、
その過程もとても楽しく充実していました。

長岡夫妻と初めて会ったのは、平成17年1月4日でした。
会うきっかけは、麦工房のホームページです。
平成16年の秋から冬にかけて当時大学病院に勤めていた私は、
月に何回か当直がありました。
空いている時間があると都内を中心とした建築家のホームページを片っ端から見ていましたが、
なかなかこれと思える方がいませんでした。
あるときたまま検索したときに麦工房のホームページにあたりました。


麦工房らしさ

これを読まれている方も感じるかもしれませんが、
ここには長岡夫妻の姿勢が見られます。
建築家としての考え方、インテリアも含めたトータルな考え方など、
他にはなかったしっかりとした考えが書かれており、かなり感銘を受けました。

また、もともとぬくもりのある木を使った建物が好きであったこと、
おまけに実家から大変近いこともあり、最初は恐る恐る正月あけ3日に電話をしてみました。
正月早々で申し訳なかったのですが、大学病院の正月休みが4日までしかなく、
群馬に居られるのも明日までと考え電話をしてみました。

長岡夫妻は暖かく迎え入れてくれました。
はじめのうちは、世間話をしながら私たちの好きなもの、イメージなどを聞いてもらい、
時にはスケッチや集めておいた切抜きなどを持っていきました。

また、私の専門である眼科は様々な医療機器があり、
それを理解してもらうため、パンフレットをどっさり渡しました。

長岡夫妻はクイズ形式を取りながら医療機器のことを覚えてくれたようです。
そのようなたくさんの機器をいかに使いやすくレイアウトするか、
何度も何度も打合せを繰り返しました。
また、何度か一緒に先輩のクリニックを見に行きましたが、
長岡さんはあちらこちらをメジャーで計測し、イメージを膨らませていたようです。


充実した医院づくり

ほぼ毎週群馬に戻っては、打合せという日々が続きました。
しかし、辛いということはなく、非常に楽しみにしていたことを思い出します。
打合せをしていると、つい楽しく時間を忘れて長居をしてしまい、申し訳なかったなと思います。
また、コストの面についても、かけるところはかける、妥協すべきところはするという
工夫をいただき、何とか予算に近いようにまとまりました。

今、こうして診療していると、時間をかけて相談し、
自分の納得いくものをつくってよかったと思います。
私たちの夢の手伝いをしてくれた長岡夫妻に感謝しています。
今後も時々遊びに行きますので、そのときにはよろしくお願いします。

作品集:かなめ眼科クリニック



麦工房さんへ“感謝をこめて”

はじめに

今になってみて私は施主としてすこぶる不適格な人間だったとつくづく思います。
つまり、いいかげんな話なのですが、
診療所を開くにあたってはっきりしたイメージが自分の中にありませんでした。
おおかたの施主は過小あるいは過大にそれをもっているのでしょうが、
私の場合は明らかに前者であり、無難であればよいぐらいのものでした。
そういう主張のなさはひょっとするとある種の設計士には都合のよいものであるはずですが、
長岡さん・由紀さんの場合は断然ちがっていました。

麦工房の姿勢

麦工房の名前を冠する限り、いい加減な妥協はゆるさない。
それはもう断々固といっていい迫力がありまして、少々閉口したのも事実です。
大ざっぱに、「あまりらしくない診療所」がいいという程度の私のイメージは
長岡さんの容れるところではありませんでした。

長岡さん・由紀さんは施主教育からはじめました。
自ら病院や医院をまわり、また、気の乗らない施主を引き連れて様々な実地見学を繰り返し、
時には東京にまで連れて行ってもらいました。
たぶん、最後の最後まで出来のわるい生徒であったはずですが、
その間に、さすがの私にも長岡さん・由紀さんの仕事というものについて
大きな勘違いをしていたことに気がつきました。


設計の本質

設計士あるいはインテリアデザイナーの頭の中には、
ある程度、診療所に対するあらかじめイメージがあり、幾通りかの案がある。
それを施主に提示し、施主はその中からそれで結構ですといった形で一つを選び、
それで設計士の仕事は終わりというものだろうと私は思っていました。

しかし、長岡さん・由紀さんが私にわからせようとしたのは、
設計図を描くのは仕事の一部にしかすぎないということでした。
設計図を描くのは施主と設計士の共同作業であり、
それ以前が大変であり、それ以後も大変なんだということでした。

建築物はたんなる物体、入れ物といってもよいのですが、そういうものではなく、
施主と設計士の思想と言ったら少し大げさですが、主張をもっていなければならない。
長岡さん・由紀さんは、そう考えているようです。


トータルコーディネーション

長岡さんとそのパートナーの由紀さんも芸術家肌であり、
こちらの鈍感さに傷ついているだろうなとは気づいていました。
しかし、さすがに長岡さん夫婦はプロであり、おのが職業について粘り強かった。
私の専門である精神科、心療内科に理解を持とうと、
本を読み実地の見学を重ねる努力をし、
自分の中でイメージを創りあげては私にぶつけてきました。

漠然とではありますが、
こちらも触発され少しずつ長岡さん夫婦の仕事を理解できるようになりました。

それはトータル・コーディネートと横文字でしか表現できそうもないものでした。
具体例で言えば、患者さんはどういう人たちで何を悩んで何を期待してくるのか、
診察室の机やドアの位置、大きさ、雰囲気、患者さんと主治医の距離、角度、
デイ・ケアとは何か、その居心地よさとは何か、待合室におけるスペースの取り方、
エトセトラ、エトセトラ…
何度も、何度も説明がありました。
特に暖房については長岡夫妻の強い勧めでOMソーラ・システムによる床暖房を取り入れました。


経営的な視点からのサポート

建築を制約する条件はたくさんありますが、最大の問題は費用でしょう。
とにかくこちらは貧乏ですので、安く、安くとそればかりでした。
その面でも長岡さんは奮闘してくれました。
設計図ができあがった段階で見積もりをいくつかの施工会社からとり、
値段を比べるだけでなく、施工会社がいかに仕事の内容を理解しているか、
実力があるかを見積書の中から読み解いて、素人にもわかるように説明してくれました。
そして長岡さんの薦めにより、安いだけでなく、仕事にも実力がある会社を選ぶことにしました。
見積価格の高い会社から見れば2000万円ぐらい安くなっていました。

さらに、施工会社と値下げ交渉もしてくれ、さらに幾ばくか安くしてもらえたのです。
麦工房と施主の契約は、建設費の数パーセントと決まっていましたから、
長岡さんは自分の利益が少なくなることを知っていながら、
施主の利益のために動いてくれたのです。

自分が設計士だったらそれほど良心的な努力をできるかどうかは、
われながら自信がありません。
その点に関して、長岡さんの麦工房は良心的すぎるほど良心的であるといえるでしょう。
見学に来た他の開業医がそれは安いと言ってくれたから、
間違いなく相当安上がりにできたようです。

建物ができあがり内装が終わり開業準備をしている段階でも、
顔の広い長岡さん夫婦は自らの知り合いに宣伝をしていただきました。
借金を返すのがどれほど大変なことであるかを知らず、
経営に関して不十分な覚悟しかなかった私にイライラして、
少しお叱りを受けるほどそれは熱心なものであり、
まったく恐縮しました。


おわりに

長岡さん夫婦の言うことを聴かなかったのは、クリニックの名前でした。
いろいろとしゃれたネーミングの案があったのですが、
なかでも一番色気のない「華蔵寺クリニック」を選んだのが
長岡夫婦のイメージにあわなかったようで多少不満げでした。

要するに長岡夫婦の仕事は自分の創り上げた作品である華蔵寺クリニックが
診療所としてうまく機能する(経営的にも)ことまでが念頭にあるようです。
当たり前のことですが、思いもしなかった不具合が建物には生じます。
何かあるたびにこちらとしてはあいかわらず長岡さんのお世話になっていて、
まことに申し訳ない次第であります。
これからもいろいろとご面倒をおかけすることと思いますが、
嫌がらずに来てください。

最後に麦工房さんを紹介してくださった写真家の平山利男さんに感謝いたします。
平山さんが麦工房を推薦してくださらなければとんでもないことになっていたような気がします。


作品集:華蔵寺クリニック



ご主人からのお言葉

身の回りの「モノたち」は益々ハイテク化し、オートマティック・ノーメンテになりつつあり、
生活は日々便利になっていく。

一方で、モーターサイクルやカメラ、靴に至るまでハイテクが導入される直前の
「ドウグたち(またその当時からの手法を忠実に守ってつくられる「ドウグたち」も含まれる)」は、
アナログであり、デザインやその機能が頂点に達したとき、
そうした「ドウグたち」は見ているだけでも美しくなる。

また、機能やその理屈などを知るに至っては感嘆する他はない。

そして、何か親近感を感じるのも否めない。

使い込むことによって「ドウグたち」と、自分が近づいていく感じ、
日頃のメンテナンスや、時には故障でドキドキさせられる感覚。

また、機能そのものが人間の持つそれとどこか相通じるところがある。
そうした「モノたち」の持つ要素がそうさせるのかもしれない。

わたしたちは漠然と「家」もそのような「ドウグたち」と同じものという意識の中で、
長岡夫妻と会話してきたのかもしれない。

そして大切な靴にシュークリームを塗り込むように
塗装に汗を流したような印象が残っている。

注 「ドウグたち」を擬人化して過剰に傾倒することは健康に良くありません。


奥様からのお言葉

私たちのライフスタイル

もともと私達夫婦は(自分達なりの)曲げられないポリシーのようなものがありました。

それを外に発信し、主張することに対しては二人ともあまり得意ではありませんが、
内に秘めているものは他人に負けない位持っているのではないかと思います。
自分で言うのも変ですけど。

結婚前の二人の遊び方といえば、
いわゆる遊園地やテーマパークの類には一度も足を運んだことはありません。
することと言えば、温泉に入るために山道を何時間も歩く。
コーヒーを沸かして飲むために美味い水を求めて険しい岩場を登る…等々、
そういった行動を共にすることで充実感を得ていました。

結婚生活に入り、「靴箱が欲しい」「陶芸の作品を飾る棚が欲しい」と私が言うと、
夫はインテリアショップに行くのではなく、私を連れ利根川河川敷に行き、
そこで流木を収集し、その流木で私がせがんだものを作成します。
これが意外と味のあるものが出来上がってしまうのです。

そういえば結婚生活に入る直前のことですが、いろいろと生活必需品を揃えていた時、
夫が「食器は自分で作ってみては?」と私に提案。
以前から陶芸を学びたいと言っていた私でしたから、その気になって教室に通い出しました。
現在我が家の食卓を飾る器(大したものではありませんが)は殆どが自分で作成したものです。
 
そうかと言って、私達は決して現代離れした生活を送っている訳ではありません。
流行の映画も音楽もチェックしますし、服装など身の回りのものにもこだわります。
インテリアや生活雑貨店などを見て回ることは大好き。
現在は少しでも安価でそれらを購入すべくインターネットオークションに夢中。
そんな今時の若者なのです。

ただし、
「質の良いものを購入して、大切に手入れし、長く使用すること」「リサイクルすること」など、
ドイツ人に似た精神を持ち合わせていること(特に夫が)を付け加えておきますが。


私たちの家づくり

自分達の家づくりを意識し始めたとき、
お互い考えていたことは共通していて
「既存のメーカーには頼らず、自分達が住みたい家を、建築士と共に創り出したい」
高級な建物ということではなく、
「環境にも自分達にも優しく、長く住み続けられ、その空間にいるだけで楽しいこと」
そういった想いがありました。

そんな私達が今回設計を依頼した長岡さんご夫妻と出会ったことは、
非常に運命に近いもの感じてしまいます。
出会うべくして出会ったという感じ。
ご夫妻は私達の感性や内に秘めている想いを十二分に引き出してくださる方達なのです。

ご夫妻が提案してくださるとおり、自分達が出来る範囲の施工(塗装等)は自分達で行い、
勿論前述したとおりの私達ですから、そういった作業を楽しく嬉々として行いました。

またそうすることで建物に対する愛着が倍増することに喜びを感じ、それがまた嬉しい!
ご夫妻は「何事もやるからには楽しまなくちゃ」という精神を私達に植え付け、
鍛えてくださいました。

今、その精神を基に着実に家造りが進行し、間もなく引き渡しを迎えようとしています。
この家造りを機に、「施主を成長させる設計事務所(!?)」と出会えたこと、
自分達も加わり共同で作業することの楽しさを知ったこと、
自分達の未知の分野を面白がって学ぶ必要性、等々、
数えあげたらキリがないくらいの経験を得ることができました。

自分達が抱くポリシーを自分達自身で良い方向に導くことの大切さ、楽しさ。
このことを忘れずに、また、オリジナルデザインの家・それが建ち上がるまでの
充実したプロセスを手に入れたことを大いに自慢したい気持ちを抑えつつ(笑)、
これからも「私達らしさ」を模索し発見し続ける生活を送っていきたいと考えています。


作品集:INDIGO CHOCOLAT