F邸(2009年10月)
F邸
リフォーム
所在地:群馬県前橋市
竣工 :2009年10月
床面積:278.38㎡
構造・階数:木造2階建
築130年の農家住宅の改装
この家は養蚕農家の建物としてつくられたもので、
このタイプの家が、前橋市の農村部の景観を形成していました。
しかし、養蚕業の衰退とともにその姿を消しつつあります。
クライアントのFさんからは、
縁側とトイレ、浴室の改装設計と施工者の選定、
それに伴う設計監理の依頼がありました。
私たちが現況調査をした時に、
F邸の庭は、日本の楽園感が強く庭園づくりに結びついた
浄土庭園になっていることが分かりました。
浄土庭園とは、建物と庭を縁側で線を引き、
建物側は今生きている迷いの世界、つまり現世で、
逆に、庭園がある向こう側をあの世に見立て
彼岸(ひがん)と称し、仏さまのいる美しい悟りの世界と
位置づけています。
F邸の庭には、何代も前のご先祖様の墓石が庭石のように置かれていて、
実際に彼岸として位置づけられていました。
この家屋を改装するにあたって策定したコンセプトは
1)ハレの間(南側の座敷)から主庭の眺望を良くすること
主庭とは、家で最も格式の高い座敷からの眺望を考えてつくられた
庭のことです。
2)現在のライフスタイルにあった機能的でプライベートな時間を楽しめる水廻り
3)改装部分が建物と調和していること
でした。
改装後の様子
外部建具上部の欄間を取り除き開口部を大きくとるとともに、
3枚引きのサッシに替えることで庭の眺望を良くしています。
before after
また、床に使われていたフローリングボードは無垢の縁甲板に変更され、
電気の配線は隠蔽され、カーテンも縦型ブラインドに替わりました。
照明器具も形を主張しないタイプのものが付きました。
シンプルなデザインにすることで、
この建物がもともと持っていた力強さが復活しました。
改装前のトイレと手洗いの様子
改装後、レストルームへ
縁側の突き当たりにある便所は、用を足す場所から
プライベートな時間を楽しむレストルームに変わりました。
便器は、低水圧に対応した最新のタンクレスタイプです。
洗面台の扉に付けられたツマミは
奥様がフランスの骨董店で購入された思い出の品です。
改装前の浴室と脱衣室の様子
改装後の浴室と脱衣室の様子
浴室も入浴時間を楽しめるような真っ白な空間に変わりました。
脱衣室と浴室の間は、透明なポリカーボネートにより仕切られ、
広がりのある部屋になっています。
一連の仕事を終えた私たちを
物静かな人格者F氏の笑顔と
明かりのともった家が
温かく見送ってくれました。
盆栽のシルエットが美しい夕刻の様子